Column

コラム:石田えり『風の色』vol.8

地球で遊ぶ

テレビのドキュメンタリー番組を見た。年々増え続けている孤独死。その予備軍と思われる一人暮らしの人々を手助けしている、あるお医者さんの視点から作られていた。今度は、同じ番組で医者に助けられた初老の男性の視点に変えて、自分なりに想像してみると、また違う世界が見えてくる。
ある日いきなりテレビが来た。内容を聞いて驚いた。オレは孤独死しそうなのか?まあそう思われても仕方ないな。とりあえず自己紹介。震災で、すべて失った。仕事、家族、仲間たち。毎日酒飲むしかやる事ないな。でもいくら何でもこんな姿、テレビの全国ネットで放送してほしくないな。何とか言いたかったが、ニコニコ笑ってしまった。ということで、その後もテレビはやって来ていろいろ聞いてくる。そのたびに、自分は本当に孤独死するような気がしてきた。そんな時、先生が近所の病院で無料で受けられる診察券をくれ、「私にできるのはここまでだから」と言った。「最初から何も頼んでないのに」と言いたかったが、カメラに映されているし、自分の役割を考えて、「私は人生の落伍者ですから」と、またニコニコ笑ってしまった。言った途端、急にこみ上げてきて、「ちょっとトイレ」と駆け込んだ後、ずっと涙が止まらなかった。
あらゆる視点から見ると、立派な人もダメな人もいない。ただ、現代の社会状況と、そこで生きる人間の姿がありのままに見える。

 

石田えり
2005年5月29日/赤旗日曜版より