Column

コラム:石田えり『風の色』vol.1

私の中にもある鈍感

有名になりたいと思う人は少なくないと思うが、なったらなったで大変である。こんなことなら、だれか先に教えてほしかったと後悔しても後の祭りである。先日、小さなカフェに入った。平日はたいてい私ひとりで、落ち着いておいしいコーヒーが楽しめる。ところが、その日は、土曜日で、満席になった。といっても8人で混雑状態だ。隣の4人席との距離は手を伸ばせば届く。そこのに3人の女性がいた。ひとりが目ざとく私を見つけ、観察開始。次に私に背を向けて座っていた2人のうち1人が席を移って観察開始。四つの遠慮ない目玉が近距離から、私の毛穴の位置まで確かめる勢いだ。その間、3人とも、無言。身動きひとつしない。思わず笑おうとしたら、目玉がいっせいに私の歯に集中したので、驚いて口を閉じてしまった!この無作法さは何だろう?自分が知らない人にジロジロ見られたらイヤな思いがするだろう?ふつう、一目見て、ギョッとする人に出合っても、そっと放っておいてあげるのが思いやりというものだろう?こういう鈍感な人たちは、他人のストレートな反応には傷つきやすく、自分は善人だと信じているので、悪いのはいつも相手の方だという被害者意識が強く、逆恨みへと向かう。
私は、顔がバレているというだけで、長い間あちこちで、このような目に遭うが、決して慣れることができない。行為そのものよりも、その根性にヘドが出るのである。

 

石田えり
2006年3月26日/赤旗日曜版より