Column

コラム:石田えり『風の色』vol.4

節約とケチは違う

“節約”と“ケチ”は違う。“節約”とは生きていく上で、本当に自分を満たしてくれるものを守るために、他を切り捨てる覚悟を持つことである。一方、“ケチ”とは、ケチそれ自体が目的で、すべてにおいてできるかぎる出費を抑えることである。節約者は必要な時には大金も惜しまないが、ケチ者はケチなプライドや欲望のために、ケチケチお金を使ったりもする。一見、現実的生活は似ているかもしれないが、思考回路は全く逆である。前者はビジョンがあり、その未来のために心を尽くし、頭脳を使い、行動するのに対して、後者にはそれがないので、“切り詰める”思考が鎖のように固まり、その生活から逃れられなくなる。状況は同じでも、“貧しさ”はお金のせいではなく、思考のせいである。私の知人のマンションは、元々は広い部屋なのだろうが、書類の山で片付かず、掃除するにもどこから手を付けたらいいものやら、ゴミためのようになっている。言い訳が、“お金が入ったら、棚を買って整理する”だった。私は、それは逆だと言った。まずは、捨てるものは全部捨て、自分の生活の場を神聖にしてこそ、新鮮な考えも浮かび、思考回路が変化し、状況も好転するだろうと。
結局は、ケチな人がやるようなケチなことをしないで、あたりまえに生きれば、お金は後からついてくる。金は天下の回りもの、だと信じているのである。どうだろう。

 

石田えり
2005年11月13日/赤旗日曜版より